フリーランスが知っておきたい!発注企業のインボイス制度への対応4パターン

フリーランスが知っておきたい!発注企業のインボイス制度への対応4パターン

ついに、インボイス制度が2023年10月から開始となりました。インボイス制度とは、消費税の処理や納付の仕組みが変わる制度であり、さまざまな転換を求められるフリーランスの方も多いと思いでしょう。一方で、フリーランスに仕事を発注する企業にとっても大きな転換期であるといえます。

 

そこで今回は、フリーランスに仕事を発注する企業側がとると考えられる「インボイス制度への対応4パターン」をわかりやすくまとめました。インボイスへ登録したフリーランスの方も、そうでない方も、あらためて自身を取り巻く環境や今後の動向について考えるきっかけになれば幸いです。

インボイス制度をおさらいしよう

インボイス制度開始に伴い、すでに課税事業者として登録を済ませた方もいれば、「いまいち何をすべきかよくわからない」「まだ登録するか迷っている」という方も多いと思います。そこでまずは、あらためてインボイス制度について理解を深めておきましょう。

 

インボイス制度の「インボイス」とは、「適格請求書」を意味する言葉です。制度の内容をわかりやすくまとめると、現在の日本で複数採用されている消費税率に関する計算ミスや不正を防ぐために導入された新制度がインボイス制度です。
消費税は現在、10%と、軽減税率の8%が併用されています。そのため、売り手は買い手に対してどの商品に対して、消費税がいくら適用されているかを明確にする必要があります。それを明らかにするのがインボイスです。

 

インボイスを交付することができる事業者を「課税事業者」、登録をせずにインボイスの交付ができない事業者を「免税事業者」と呼びます。登録をする場合は電子申請が可能であり、約2週間で完了します。発注元から登録を求められた場合、すぐに課税事業者になれるわけではないため、注意が必要です。
この制度の開始に伴い、仕事を発注する企業(買い手)と、仕事を受ける事業者(売り手)にさまざまな影響が生じることになりました。

仕事を発注する企業(買い手)への影響

フリーランスなどの事業者に仕事を発注する企業は、仕入税額控除を受けるために適格請求書(以下、インボイス)の保存が必要となります。そのため制度の開始以降は、取引をする事業者がインボイスを交付できる課税事業者か、未登録の免税事業者であるかを買い手である企業が把握することが必要になりました。取引先が登録事業者かそうでないかは、企業が収める消費税額に関わるため、非常に重要な確認事項です。

仕事を受ける事業者(売り手)への影響

インボイス制度開始に伴い、仕事を受けるフリーランスの中には、インボイスへ登録するか否かの選択に悩まされたという方も多いのではないでしょうか。なぜなら、課税事業者になるか、免税事業者を継続するかは、消費税負担だけでなく発注元との契約継続にも関わる重要な選択になるからです。

 

インボイスを発行できる課税事業者になることで、課税金額が増える一方、登録することで優先的に取引してもらえるという可能性もあるため、慎重に検討する事業者も多いです。

インボイス制度の詳細については、国税庁のホームページをご参照ください。
(参考:国税庁ホームページ

発注企業によるインボイス対策 その1.課税事業者への登録意向を確認

それでは実際に、発注元である企業がインボイス制度へどのような対策を行うと考えられるのかを見ていきましょう。企業側の対策を知ることで、事業者としても自分自身に合った必要な対策を見直すことができるかもしれません。

 

まず1つ目が、課税事業者への登録する意向の有無を確認することです。企業側にとっては、今後も取引を続ける事業者が課税事業者へ登録予定か、免税事業者として継続していくのかは非常に重要です。なぜなら、免税事業者に発注を続けることで、企業側の消費税負担が増えるからです。

そのため、現時点で免税事業者として取引をしているフリーランスに関しては、「今後インボイスへ登録予定はありますか?」と企業側から意向を確認していくことが予想されます。

 

仮に免税事業者であるフリーランスと取引を続ける場合でも、一定期間は企業の消費税負担は軽減されることになります。

これは、2023年10月1日から2029年9月30日まで定められている、以下のインボイス制度導入の経過措置期間によるものです。
期間内では免税事業者に対しても消費税が仕入税額控除の対象となります。しかし、2029年9月30日を過ぎると、適応外となります。

2023年10月1日〜2026年9月30日:仕入税額相当額80%
2026年10月1日〜2029年9月30日:仕入税額相当額50%

発注企業によるインボイス対策 その2.フリーランスのインボイス登録状況を確認

取引をしている各事業者がインボイスを発行できる課税事業者として登録しているかどうか、企業側が確認することができます。具体的には、国税庁が運営する「国税庁適格請求書発行事業者公表サイト」を使って、事業者情報を検索します。

しかし、すべての取引先を確認する作業は非常に手間がかかるため、上記に挙げたように取引先へ直接確認する方法をとる企業が多いと考えられます。

発注企業によるインボイス対策 その3.課税事業者との取引を優先?

仕事を発注する企業としては、インボイスを交付できる課税事業者であるフリーランスとの取引を優先することに大きなメリットがあります。今後、課税事業者としての登録が契約する際の一つの優先事項になるかもしれません。

 

発注者である企業が、インボイスを発行できる課税事業者との取引を優先したい主な理由は、消費税負担を抑えることができるからです。インボイスを発行してもらうことで仕入税額控除が適用となります。そうなると今後、取引先と契約を検討する際に、課税事業者を優先する可能性が考えられます。

 

免税事業者としては納税額を抑えたい一方、発注者との取引ができないことは死活問題です。免税事業者を継続しているフリーランスにとっては、インボイスへの登録が常に頭を悩ませる問題になりそうです。

免税事業者と取引を続けるケースもある

免税事業者であり続けるフリーランスというのは、地域の中にいる小規模事業者や個人である可能性が高いです。「この仕事はこの人にしか依頼できない」と評価された場合、仮に発注側が仕入税額控除を受けられないとしても、取引を継続もしくは新規契約が発生する可能性があるということです。

企業側の金銭的負担以上に、価値を認められたフリーランスであれば、インボイスの登録状況に問わず企業から選ばれ続けるかもしれません。

発注企業によるインボイス対策 その4.免税事業者に対しては風当たりが強くなる?

仮に取引している事業者がインボイスに登録をせず、免税事業者を続けた場合に企業はどのような対策をとるのでしょうか。考えられることは主に2つあります。1つ目は消費税額を差し引いた報酬額で契約時の値引き交渉をする可能性2つ目は契約自体を更新するか否か見直す可能性です。

 

免税事業者との取引については、先にも述べたように発注者が仕入税額控除を受けることができません。つまり、実質消費税分の10%(もしくは8%)を発注者である企業が負担することになります。そのため、報酬額を提示する契約の段階で、発注者が納税する消費税を差し引いた金額での交渉になる可能性が考えられます。

 

2つ目は最悪の場合、契約条件に「課税事業者であること」を提示されたり、そうでない場合は取引を中止されたりといった提案の可能性です。発注者としては、インボイスを発行できる課税事業者との取引の方が、メリットが大きいと考える可能性もあります。なぜなら、実際に売上に対する消費税納付額が増えるということにより、関連して法人税の納税額や、事務手続きにかかる時間的コストが増大することが予想されるからです。

 

とはいえ、事業者側にインボイス登録の法的強制力はありません。取引先が主に個人や中小企業など免税事業者である場合は、インボイス登録の優先度が低いと考えるフリーランスの方もいるかと思います。
しかし、取引継続においては、インボイスへ登録することを求める企業もあります。

 

以上のように、インボイス制度をあらためて理解してみると、企業側としては課税事業者に登録しているフリーランスと取引することにさまざまなメリットがあることがわかります。発注者の視点からどのようなインボイス対策をとる可能性があるかを知ることで、フリーランスとして自分に合ったインボイス対策を進めていくことが重要といえます。

 

取引先との関係を構築する上で、気持ちの良いコミュニケーションをとることは非常に大切です。発注者である企業の意向や事情も考慮しながら、フリーランスとして働く上でインボイス登録の有無が自分自身にどう影響するかをあらためて見直してみてはいかがでしょうか。

記事一覧を見る

資料ダウンロード