フリーランスと取引を始める時の契約書の作り方と注意点は?確認しておきたい7つのこと

フリーランスと取引を始める時の契約書の作り方と注意点は?確認しておきたい7つのこと

企業による働き方改革の推進や、IT技術の進化により、時間や場所に縛られないフリーランスという働き方を選ぶ人が増えています。クラウドソーシングサービスを提供するランサーズが2022年に行った調査によるとフリーランス人口は1,577万人であることがわかりました。コロナ禍の影響もありフリーランスの人口はここ5年で拡大しています。

 

また最近では人材不足や経費削減、市場ニーズの多様化などで、フリーランスに業務を委託する企業が増えてきました。企業に限らず、業務の一部をフリーランスに外注している個人事業主も多いでしょう。
(参考:ランサーズ「『新・フリーランス実態調査 2021-2022年版』発表」

 

フリーランスに業務を委託する場合、電話一本、メール一通で仕事をお願いすることも可能ですが、業務に着手する前には必ず「契約書」を作成しましょう。

契約書を作成しておかないと、将来もめごとが発生した際に、問題が大きくなったり解決が困難になったりする可能性が高まります。

 

今回は契約書作成の手順や盛り込むべき内容について詳しくご紹介しますので、「これからフリーランスに仕事を委託したいけど、契約書の作り方や内容がわからない」という方はぜひ参考にしてみてください。

業務委託契約とは?

まずは契約書の作り方の前に、業務委託契約について再確認しておきましょう。

 

「業務委託」とは、雇用契約によらず、業務の一部を別の会社や個人に依頼して実施してもらい、その業務分の報酬を委託先に支払うという仕事の仕方です。以前は代理業などを行う企業が依頼を受けることが多くありましたが、コロナ禍等の影響もあり、最近では個人事業主やフリーランスなどの個人が委託を受けることが増えてきています。

そこでこの業務委託で必要となる「業務委託契約」ですが、実は法律上の契約類型はありません。一般的には「請負契約(注1)」や「委任、準委任契約(注2)」の契約を総称して「業務委託契約」と呼んでいます。

この業務委託契約を結ぶ時に作成するのが契約書です。

 

(注1)請負契約・・・業務を請け負った人が仕事を完成することを約束し、その成果の対価として報酬が支払われる契約。

(注2)委任、準委任契約・・・成果物ではなく業務の履行自体に対して委任した方が報酬を支払う契約。

フリーランスとの契約書を作る手順4ステップ

契約書を作成するのは難しくはありません。以下の手順をもとに一つひとつ着実に行っていけば、時間や手間をかけずに作成することができます。

契約書を作る手順とは?

 

契約書を作成する手順は
1.フリーランスと契約内容について話し合う
2.契約書を作成し内容の確認を行う
3.内容に問題があれば修正する
4.業務委託契約を結ぶ
の4つです。

 

ではそれぞれの手順について詳しく解説していきます。

1.フリーランスと契約内容について話し合う

初めに行う手順は、フリーランスと業務の契約の内容について話し合うことです。

話し合いの内容としては、業務の範囲・契約期間・報酬の金額などがあります。業務の内容や条件について細かいところまで話し合って、契約の内容を取り決めていきます。

 

内容や条件について相違が出たら、話し合いを一旦中断し、クライアント側は上司などに相談し、指示を仰ぐことも必要です。どうしても委託をしているクライアント側は自分たちの条件をフリーランスに押し付けてしまいがちですが、あくまで対等な立場で仕事を行っていることを忘れないようにしましょう。お互いが納得のいく条件になるまで話し合います。

2.契約書を作成し内容の確認を行う

話し合いで契約内容が決定した後は早速契約書を作成しますが、その前にフリーランスと契約の内容について最終的な確認をしておくことが大切です。
最終確認が終わったら、いよいよ契約書を作成します。

 

契約書を作成するのは、業務を委託するクライアント側でも、受託するフリーランス側でもどちらでもかまいませんが、基本的には委託するクライアント側が作成することが多いようです。

クライアント側が作成した場合は、社内の法務部や弁護士などに契約書に不備がないか確認してもらいましょう。

3.内容に問題があれば修正する

契約書ができあがったら、相手側に内容に間違いがないか確認してもらいます。

内容に相違があれば修正する必要があります。その際、相手の言われた通りにすぐに修正するのではなく「話し合いで取り決めた内容と相違がないか、どの点が相違しているのか」「話し合っていない内容が追加されていないか」「勝手に自分側に不利な内容に修正されていないか」を確認しましょう。

 

契約を結んだあとから相違点に気づいても 、「契約書に書いてあることで同意している」とつっぱねられる恐れがあります。契約書のすみずみまで相違点がないか確認することが重要です。

相違点について話し合い、契約書を修正したら相手側に再度確認してもらいます。契約書の内容について了承が得られれば、契約書の完成です。

4.業務委託契約を結ぶ

完成した契約書をもとに業務委託契約を結びます。

同じ記載内容の契約書を2部用意し、用意をした2部の契約書に署名、捺印をし、割印をします。クライアントとフリーランスで1部ずつ保管します。
契約が続く限りは契約書の保管が必要ですので、大事に保管しておきましょう。

契約書を作るうえで話すべき内容7つと注意点

では、契約書を作成するにあたって、どんな内容を話し合えば良いのでしょうか。

 

委託内容によっても異なりますが、原則、以下のように最低限話し合うべき内容が7つあります。

1.業務の内容と範囲、権限
2.成果物の報酬
3.経費の負担
4.契約期間
5.損害賠償発生時の対応
6.秘密保持
7.禁止事項

 

それぞれ詳しく見ていきましょう。加えて、話し合う際に注意しなければならない点についても解説していきます。

1.業務の内容と範囲、権限

初めに話すべきは業務の内容です。

どのような業務をフリーランスに委託したいのか、どこまでの範囲の業務を委託したいのかについてクライアント側が具体的に話をします。それをもとにフリーランスも受注できる内容や範囲について話をします。

 

また、クライアント側で業務の遂行方法や手順など決まったものがあれば、それらについてできるだけフリーランスに詳しく話しておく必要があります

業務の範囲や内容について話し合ったら、フリーランスから納品された成果物や、業務の過程で発生した著作権等の知的財産の権利について話し合うのを忘れないようにしましょう。クライアント側かフリーランス側のどちらに帰属するのか明確にしておきます。基本的にはクライアントが側に帰属することが多いようです。

2.成果物の報酬

フリーランスに委託した業務の報酬について話し合います。

金銭に関わることなので、一方的に「この金額でお願いします」とならないように注意してください。フリーランスが仕事の対価として納得がいく金額になるよう歩み寄ると、後々の金銭トラブルが回避できるでしょう。基本的には報酬は後払いという形が多いようです。報酬の支払方法や支払期限についても話し合っておきましょう。

3.経費の負担

フリーランスが業務を遂行するにあたり、経費が発生した場合、クライアント側とフリーランス側のどちらがその費用を支払うかについて明確にしておきます。

 

すべての経費をフリーランス側が支払うとなると負担が大きくなってしまうケースがあります。場合によっては報酬から経費を除くとほとんど残らないケースもあるでしょう。

経費をクライアント側が支払う場合は、どの範囲まで認めるのか、金額の上限はいくらかなどをあらかじめ決めてフリーランスに話します。業務に見合った経費を支払えるよう、概算しておきましょう。

4.契約期間

クライアントとの委託の契約期間や、自動更新を行うかについて話し合います。

5.損害賠償発生時の対応

クライアント側やフリーランス側のどちらかに契約違反等が判明した場合に発生する、損害賠償について話し合います。

どういった内容が契約違反なのかは話し合う必要がありますが、細かなところまで決めておく必要があることに注意しましょう。また損害が発生した場合にどこまでの範囲を損害賠償の対象とするのか、損害賠償の額をどうするのか等を話し合って決めておくと安心です。

6.秘密保持

クライアントからフリーランスへ業務を委託する際に、守るべき一定の秘密保持条項があれば話しておきます。これは仕事の中で知りえた情報や技術の流出や流用を防ぐためで、フリーランスは提示された内容が過剰なものでないか確認します。

 

また、秘密保持条項は受託者であるフリーランスを守るためにも重要です。クライアント側の不注意により、納品物内の情報が流出してしまう可能性もあるためです。

7.禁止事項

業務を遂行するにあたって、禁止するべき内容があればフリーランスに話しておきます。

偽装請負に注意?

偽装請負とは、本来はフリーランス等に対し「雇用契約」とすべきなのにあえて「請負契約」のように偽装することです。

請負契約では、委託者(クライアント)側が実際に業務を行う受託者のフリーランスに対し、直接業務上の指示を行ったり、契約外の業務を委託したりすることが禁止されています。

 

請負契約にならないために、クライアント側は次の4つの点に注意しましょう。

1.仕事を完成させるのはフリーランスの責任である。
2.仕事の進め方についてはフリーランスが決める。
3.フリーランスから労働力を提供されているとは考えず、フリーランスの技術を使って仕事を行うと考える。
4.偽装請負と疑われないような契約書を正しく作成する。

 

偽装請負と認定されたら、クライアント側が労働基準法違反や最低賃金法違反などで処罰される可能性もあります。偽装請負の疑いをかけられることがないように、作成した契約書はできる限り、法務部や弁護士に確認してもらうようにしましょう。

まとめ

フリーランスと取引を始めるにあたって作成する契約書について、その手順や契約書を作るうえで話し合う内容について解説してきました。

 

デジタル化に伴い、書面での契約書に代わる「電子契約書」の活用も増えてきています。最近ではリモートワークで仕事をしているフリーランスも増えてきていますが、電子契約書を利用することにより、契約書を郵送で送る等の手間が省けるというメリットがあります。この機会に電子契約の導入を検討してみるのも良いでしょう。

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