副業・兼業支援補助事業は、副業や兼業を通じて他の会社に社員を派遣する企業や、その人材を自社で採用する企業を援助する事業です。
政府が副業や兼業の普及を推進する中、この補助金プログラムを活用することで、時代の流れを上手く捉えることができます。
今回はこの副業・兼業支援補助事業について詳しくご紹介します。
第1公募は2023年5月11日にすでに終了していますが、第2回の公募はまだ開始前なので、今から準備に取り掛かることで応募することは可能です。
補助金の割合や上限額、申請の手順、スケジュールなど、幅広く解説しますので、ぜひ参考にしてください。
社員の副業を認め、企業も外部フリーランスを活用する時代へ
人生100年時代を迎え、若いうちから自らが希望する働き方を選べる環境づくりが必要になっています。
その環境づくりの一環として、国は平成30年に副業・兼業に関するガイドラインを改定。「労働時間以外の時間は労働者の自由である」として、副業、兼業を推進する内容に変更しています。
(参考:厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」)
この改訂は労働者だけにメリットがあるわけではありません。社員が外の環境でスキルを伸ばし、他の企業でも働く機会を得られることは、優れた人材が自社から移籍するのを防ぐメリットにもなります。
さらに、他の企業から副業または兼業の形で人材を迎え入れることで、労働力の不足を補うことも可能となりました。
労働者と企業の双方を支援して、副業・兼業をさらに推進していこうというのが副業・兼業支援補助事業です。
副業・兼業支援補助事業とは?
副業・兼業支援補助事業とは、企業などが副業・兼業に人材を送り出すため、また、副業・兼業を受け入れるための費用を一部補助する事業です。企業などの費用の負担を軽減することで、副業・兼業を促進させることが目的とされています。
また、補助金によって企業間・産業間での労働移動がスムーズになり、経済成長がもたらされると期待されています。
副業・兼業支援補助金に上限はある?実際にいくら補助される?
副業・兼業支援補助事業ではAとBの2つの類型があり、それぞれ上限が異なります。
それぞれの補助率や補助上限額、補助対象経費は以下の通りです。
類型A 副業・兼業送り出し型
項目 | 内容 |
補助率 | 1/2以内 |
補助上限 | 1事業者あたり100万円 |
補助対象経費 | ①専門家経費 ②研修費 ③クラウドサービス利用費 |
類型B 副業・兼業受け入れ型
項目 | 内容 |
補助率 | 1/2以内 |
補助上限 | 受け入れ1人当たり50万円 ※1事業者あたり上限250万円(5人まで) |
補助対象経費 | ①仲介サービス利用費 ②専門家経費 ③旅費 ④クラウドサービス利用費 |
副業・兼業支援補助金の要件と注意点
副業・兼業支援補助金の類型A・類型Bの要件と注意点は、それぞれ以下のような内容です。
副業・兼業送り出し「類型A」
類型Aは自社の社員を他社に副業・兼業として送り出す企業が利用する枠組みです。他社に送り出すにあたり、社内規定の改定やルール変更などにかかる費用の一部が補助されます。
類型Aの基本条件としては以下を満たす必要があります。
① 従業員の就業に関する社内ルール(就業規則等の社内ルールとして明文化されたものに限る。以下同じ。)の改定を伴うものであること ② 社内ルールの改定によって、従業員の副業・兼業を認める範囲が広がることが見込まれること ③ 改定後の社内ルールが、モデル就業規則(厚生労働省)第70条(※)の規定に準じたもの、又は、同条の規定よりも広範に従業員の副業・兼業を認めるものになると見込まれること ④ 改定後の社内ルールについて、全ての従業員に周知することが見込まれること |
※モデル就業規則第 70 条の規定は以下の通りです。 (副業・兼業) 第 70 条労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。 2 会社は、労働者からの前項の業務に従事する旨の届出に基づき、当該労働者が 当該業務に従事することにより次の各号のいずれかに該当する場合には、これを禁止又は制限することができる。 ①労務提供上の支障がある場合 ②企業秘密が漏洩する場合 ③会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合 ④競業により、企業の利益を害する場合 (引用:経済産業省「中小企業新事業創出促進対策事業費補助金募集要項」) |
条件には社内ルールを変更、副業・兼業を認め、従業員に周知させることが盛り込まれています。しかし、送り出す企業が損を被る可能性がある場合はこれを停止することができることも明記されています。
副業・兼業受け入れ「類型B」
類型Bは副業を希望する他社の従業員を受け入れ、就業させる企業や個人が利用できる枠組みです。主に人材仲介会社への手数料や、雇用に係る費用の一部が補助されます。類型Bでは以下の基本条件を満たす必要があります。
他の企業等(自社との間に独立性が認められない企業等を除く。)において雇用契約又は業務委託契約に基づき就業している個人と新たに雇用契 約又は業務委託契約を締結した上で、同契約に基づき、当該個人が当該他の企業等での就業を継続している状態のまま、自社の業務に就業させるものであって、以下のいずれの要件も満たすものであること ① 自社の業務に就業させる期間が、少なくとも3か月以上であること ② 受け入れる人材が有するスキルや経験などを活用することが、受け 入れ企業の経営課題の解決につながると見込まれること(ただし、 自社の既存の業務に関する人員が不足しているという課題に対応するために、当該業務に関する人員として、副業・兼業人材を受け入れる場合を除く) (引用:経済産業省「中小企業新事業創出促進対策事業費補助金募集要項」) |
自社で3ヶ月以上就業させることや、受け入れた人材が企業の経営課題の解決につながることが見込まれることが条件となります。しかし、人材不足についてはこれには該当しません。
副業・兼業支援補助金の注意点
類型A・類型B共に、実績報告時に補助事業の条件を満たしていない場合は、交付決定後であっても補助は受けることはできません。
申請通りに就業させなければ、補助金が受け取れなくなるので注意しましょう。また、交付決定後であっても無効になる可能性もあります。
副業・兼業支援補助金の補助対象経費
ここからは、それぞれの類型の補助対象経費の具体的な内容を解説します。
副業・兼業送り出し「類型A」の対象経費
類型Aの補助対象経費は以下の3種類です。
専門家経費
専門家経費とは、補助事業の実施のために依頼した専門家の指導・助言に応じて支払われる経費のことです。具体的には就業規則の改訂や、人事制度の設計に係る社労士や弁護士への相談費用及び旅費のことを指します。
謝金の単価は、以下の単価が目安として定められています。
・大学教授、弁護士、弁理士、公認会計士、医師等 :1日5万円以下(消費税抜き)
・准教授、社会保険労務士、技術士、中小企業診断士、 IT コーディネータ等 :1日4万円以下(消費税抜き)
研修費
研修費とは、副業・兼業に関する制度の導入又は副業・兼業の促進に係る研修に係る費用のことです。外部講師を招いての講習を開いたり、社員の研修を行ったりした場合の経費です。
事前の申請時にどのような研修を行うのかといった申請をする必要があります。入学費や交通費、滞在費は補助対象外なので注意しましょう。
クラウドサービス利用費
クラウドサービス利用費とは、副業・兼業に送り出す社員の勤怠、就業管理のためのクラウドサービスを利用する費用のことです。サーバー利用費が対象となりますが、サーバー購入やパソコン、タブレットの購入は対象外となるため注意しましょう。
副業・兼業受け入れ「類型B」の対象経費
類型Bの補助対象経費は以下の4種類です。
仲介サービス利用費
仲介サービス利用費は、副業・年業人材を受け入れるために人材会社等の仲介サービスを利用する場合にかかる費用のことです。
具体的には求人を掲載した際の掲載料や、実際に受け入れた際の仲介手数料のことを指します。
専門家経費
受け入れに向けて、契約書の内容や副業・兼業人材への業務の切り出しなどについて専門家に相談する際にかかる費用です。弁護士や中小企業診断士等の専門家への相談や旅費が該当します。
謝金の単価は、以下の単価が目安です。(類型Aと同様)
・大学教授、弁護士、弁理士、公認会計士、医師等 :1日5万円以下(消費税抜き)
・准教授、社会保険労務士、技術士、中小企業診断士、 IT コーディネータ等 :1日4万円以下(消費税抜き)
旅費
旅費とは、副業・兼業人材の受け入れに向けて、初期研修や現地視察等のために副業・兼業人材が当該企業等を訪問するための旅費のことです。具体的には電車賃、新幹線代金、航空機代、宿泊施設利用代などが該当します。
人材1人あたり、1回までとなるので注意しましょう。
クラウドサービス利用費
クラウドサービス利用費とは、人材受け入れのため、サーバー上のサービスを活用する際にかかる費用です。すでに導入している場合は認められませんが、機能を拡張する場合は経費として認められます。また、類型A同様にパソコンやタブレットの購入は、対象外です。
副業・兼業支援補助事業の申請方法
副業・兼業支援補助事業の申請は、補助金申請システム「jGrants(J グランツ)」のみで受け付けています。 郵送による申請は行っていません。
また、jGrantsの利用には「gBizID プライムアカウント」の登録が必要です。
アカウントの発行には、2週間ほどの時間がかかるので、公募が始まる前にアカウント発行の手続きを行いましょう。
副業・兼業支援補助事業の申請の流れ
申請の流れは以下の通りです。
① 本事業の交付規程・公募要領の確認 ② 利用が見込まれる各種サービスの選定、研修等の企画検討 これらに伴う見積書の取得(※契約は交付決定日以降) ③ gBizIDプライムの取得(※未取得の場合のみ) ④ 事業の申請書、事業計画書の作成 ⑤ 必要書類の準備(見積書・履歴事項全部証明書・決算書等) ⑥JグランツにgBizIDプライムでログイン 申請フォームから公募申請(必要情報の入力・添付) ⑦ 審査委員会による採択審査 ⑧ 採択・交付決定 (参考:経済産業省「中小企業新事業創出促進対策事業費補助金(副業・兼業支援補助事業) 公募要領(第1次公募)」) |
副業・兼業支援補助金の今後のスケジュールは?
すでに第1公募は2023年5月11日で締め切られているため、第2公募開始の発表を待ちましょう。
第2公募のスケジュールは、順次更新される本補助金のホームページでご確認ください。先述した「gBizID プライムアカウント」取得に時間がかかるので、申請を希望する場合は日にちに余裕を持って準備を進めましょう。
まとめ
今回は、副業・兼業支援補助事業の要件や、補助金の上限額、申請の手順、スケジュールなどを解説しました。
副業・兼業支援補助事業を活用すれば、副業や兼業の送り出し、受け入れにかかる費用を抑えることにつながります。
また、副業・兼業を認め社外のフリーランスを就業させることで、企業のイメージアップや人材不足の解消にも繋がり、業務の効率化をはかることもできます。第2公募はまだ始まっていないので、「gBizIDプライム」のアカウントを発行しておくなどの準備を進めておきましょう。